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認知症の方への接し方 日常生活でのトラブルと対処法

2019.12.04(水)

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認知症高齢者との日常生活の中で、このような経験はありませんか?

日常生活の中のトラブルの例と、その上手な対処法についてご紹介します。




●電気製品が使えなくなった ●

 

 高齢者にとって電子レンジや食器洗い機等の最近の電化製品は認知症でなくても扱いにくいものです。

 

 若い人には便利に思える音声案内など機械がしゃべるというだけで混乱を招くでしょう。難しい操作を無理に教えようとせず、手で食器を洗う等、昔から体で覚えた事が今までの生活の継続であり混乱が生じません。残存能力を維持する良い面にもなります。また、説明書の字を大きく書き直して認知症の方が理解できる部分を支援するのも一案です。

 

 

 

おつりの計算ができなくなった

 

 認知症高齢者のなかには、買い物をしてもおつりの計算ができなかったり、おつりをもらうこと自体を忘れてしまうことも少なくありません。

 

 買い物には家族が付き添うか、買い物の店が決まっている場合には、店の方に状況を説明して協力を求めることも必要になってきます。買い物自体を制限することは、あまり好ましいとはいえません。 計算ができない認識があるために、高額紙幣を出され計算をしないで、おつりを受け取られることもありますので一緒に買い物に行く際には注意して見られると良いでしょう。

 



セールスに何でも買う約束をする

 

 日中独居の高齢者で家に来たセールスから何でも買ったり、契約したりする人がいます。

 

 認知症の高齢者に対し物を売りつける行為は悪い事ですが、売る方が認知症である事がわからない人もいて、必ずしも悪いとも言い切れません。対処法としてはとにかく不要な買い物や不当な契約とわかった時点ですぐに取り消す事です。クーリングオフ制度を活用し、成年後見人制度の活用を検討しましょう。

 

また、印鑑やクレジットカード等は高齢者の身近には置かない事です。また、そのような状況が想定されるときは、地域で地域福祉権利擁護事業といって 見守りや支援をしていただけます。また、成年後見制度の活用を検討しましょう。まずは区市町村の担当窓口や包括支援センターに相談するといいでしょう。

 

 

 

商品を大量に注文する 

 

 認知症のため、注文したことを忘れて、何度も同じものを注文したり、大量に注文したりする事もあります。

 

しかし本人はまったくそのことに悪気はありません。このような場合は、本人を叱っても逆効果です。買い物に付き添うようにしたり、行きつけの店があるのであれば、協力を依頼するようにするのもひとつの方法でしょう。

 

 

 

人の家のものや拾い物を持ち帰る

 

 通りがかりの家の庭の草花や、公共機関の傘立てから傘を持ってきてしまったり、トイレットペーパーを持ってきたりと「収集癖」と呼ばれる症状です。

 

 持ってきた場所がわかる場合にはお詫びに行くことも必要ですし、本人の状況を伝え理解していただくことも必要です。

 



何でも持ち帰り、家の中に集める

 

そのような行為を中止させることは容易ではありません。

 

 少し前の自分の行為を覚えていない事が多いことから、自分が何を集めて、それをどのようにしたのかは覚えていないことが多いです。本人がいない時に、処分する方法もありますが、何を持ってきたか覚えていて、泥棒が入ったと不安になるケースもあるので、見極めが必要です。物がないと不安で何でも持ち帰る方で、あえて引き出しをいっぱいにしておくと安心したというケースもあります。

 

 

 

まだ明るいのに雨戸を閉め戸締りする

 

まだ明るいうちから家中の雨戸を閉めて戸締りをする事を日課のようにしている高齢者がいます。

 

 強盗に対する恐怖心からという場合もありますが、一般的には時間に対する見当識障害と言えるでしょう。まだ明るいから雨戸を閉める必要がない事を説明するのではなく、その高齢者が興味を持てるような事や今までの仕事や趣味を見つけてあげるようにしましょう。または明るくなったので雨戸を開けましょうと声かけ、一緒に行ないましょう。

 

 

 

作り話ばかりする

 

 過去に体験した事柄を断片的にしか思い出せず、それを補おうとする結果が作り話になるのではないかと言われています。

 

 忘れた部分に自分なりの話を作ったり、願望や空想を真実と思い込んだり、過去の体験を混同したりします。たとえ作り話であっても、こちらもその作り話の登場人物になってあげて、先の物語を一緒に作ってあげるという対応で十分です。また、 認知症になってもお話を作れることは素晴らしい事です。

 



大事なものを人にあげてしまう

 

 高齢者が大事にしていたものを他人に上げてしまい、後に「あれは何処にいった」、「盗まれた」と騒ぐ人がいます。

 

これも症状だから悪気はありません。このような事が何度もあるようなら、「おじいちゃんの大事なものだからここにしまっておきましょうね」などと説明し一緒にまとめて保管しておきましょう。また、近隣には認知症の事を話し、もらった事にして預かっていただくように頼んでおけば安心です。

 

 

 

車の運転をやめようとしない?

 

 高齢者の中には以前からしていた車の運転を止めない人がいます。

 

 残存能力によっては可能な場合もありますが基本的には大変危険と言えるでしょう。「車が故障中だから」とか「眼鏡を替えてから」等と言って止めればいいのですが、なかなか止めない場合は車のキーを取上げる等の強行手段が必要かもしれません。




トラブルのほとんどは、認知症の症状と、それに対する恐怖や不安などが要因となってトラブルにつながるケースがほとんどです。


家族だけで抱え込まず、ケアマネージャーや相談員に相談してみるのも大切なことです。

ご本人へのヒントが見つかるかもしれませんし、同じような事例やこれまでの実際の対応策などを紹介してくれるかもしれません。



当院では、認知症の診断・治療を行う「脳の健康外来」の診察を行っています。


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医師:酒谷薫


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キーワード:認知症,接し方,トラブル

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