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マイタケにウイルス抑制効果!?

2009.10.27(火)

【平成21年10月24日(土)毎日新聞より】

新型インフルエンザにかかる人が一向に減らない。ワクチン接種による予防法が進みつつあるが、日ごろの備えも欠かせない。今回は食べて予防になる可能性のあるいくつかの研究をリポートする。

●キノコの作用に注目…新型インフルエンザの治療ではタミフルやリレンザが知られているが、最近はタミフルが効かない耐性ウイルスも現れた。耐性ウイルスが人から人に感染する事態までは至っていないが、今後どう対処すべきかは大きな課題だ。そんな中、どのウイルスにも予防効果が期待できるかもしれないと言われる食材がある。キノコの一種、マイタケだ。研究しているのは落合宏・富山大学医学部名誉教授(微生物学)と小尾信子さん(医学博士)らの研究チーム。キノコや生薬が、がん細胞の増殖を抑えたり免疫を強めたりする作用があることから、インフルエンザウイルスの増殖にも抑制効果があるのではと着目した。まずはマイタケから温水で抽出した多糖を主成分とするエキス(煮汁を凍結乾燥させた粉末)が、ウイルスの増殖を抑えるかどうか実験。ウイルスにはA香港型を使った。ウイルスは生物の細胞(宿主細胞)に取りついて初めて増殖する。落合さんらはイヌの腎臓由来の細胞にウイルスを感染させ、その細胞が生きている培養液にマイタケ抽出物を加え、増殖を抑えることができるかを調べた。結果は予想を裏切り、ウイルスの増殖を抑えることはできなかった。

●病原微生物を撃退…そこで、次に目をつけたのが白血球の一種であるマクロファージという免疫細胞。サイトカインといわれる生理活性物質を出し、病原微生物などを撃退する働きをする。実験はマクロファージを添加した培地にマイタケ抽出物(濃度1mlあたり300μg)を加え、ウイルス増殖にどう影響するかを見た。すると、マクロファージとマイタケ抽出物の接触時間が長いほどウイルスが減り、12時間で3分の1〜4分の1まで抑えることができた。落合さんは「マイタケ抽出物自体がウイルスを直接攻撃するのではなく、免疫細胞を活性化することで間接的にウイルスを減らせた」と説明する。

●生理活性物質が抑制…では、どんな物質がウイルスの増殖を抑えたのか。マイタケ抽出物の刺激時間が長くなるとともに、TNF-αが増えていることが分かった。TNF-αはマクロファージなどが分泌するもので、腫瘍細胞を壊死させる生理活性物質として以前から知られるたんぱく質だ。こうした実験結果を昨年、米国の医学雑誌「米国漢方ジャーナル」に発表した落合さんは「ウイルスの増殖を抑制した有効物質はTNF-αではないか」とみる。TNF-αがエイズウイルス(HIV)などを抑えることは以前から知られていたが、今回のように自然界にある食品(マイタケ抽出物)がマクロファージを刺激することで生成されるTNF-αがウイルスの増殖を抑えるという事実は、新しい研究結果だという。同様の作用はショウガでも得られた。漢方薬の麻黄や桂皮(けいひ)にも抗ウイルス作用があるという。

●マクロファージ刺激…では、どれくらい摂取すれば有効なのか。今回の実験から推定すると、100mlの水に15〜30gの生マイタケを入れて鍋で煮て、その汁をすべて飲む量に相当するという。落合さんは「マイタケを食べると腸管粘膜で顔を出すマクロファージを刺激するのではないか」と推測。ただ、今回の実験は培養細胞を用いたものなので、人や動物に直接与えて効果を確かめたものではない。効果の判定にはさらに厳密な追跡試験が求められる。

●センダン、牛初乳も…新型インフルエンザの予防法としては、南西諸島や九州などに自生するセンダンの葉も注目され、ウイルス研究で知られる根路銘国昭氏(沖縄県)が抽出成分を生かしたスプレーを開発。桑の葉にある成分の抗ウイルス作用に着目した研究も進んでいる。また牛の初乳(出産後6、7日目の乳)を含む市販の初乳サプリメント(栄養補助食品)が子供や大人の風邪やインフルエンザを予防したり、症状を軽くする効果が学会で発表され、保育園などで効果を確かめるモニター試験も行われている。

キーワード:マイタケ,ウイルス,マクロファージ,センダン

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